第35章 【第三十四訓】ホストクラブ『高天原』の話 其ノ一
「誰ですか。アレ」
訪れて来た新八を含め、四人は朝餉の席にある。
○○の脳内でぼんやりと再生されていた調理の音は、実際に台所から聞こえていた音だった。
知らないおばちゃんの作った朝ご飯を、四人は食べている。
ゴミを捨てて来ると言い、見知らぬおばちゃんは姿を消した。
母ちゃんだろと銀時は言うが、誰の母でもない。
「○○さん?」
新八は隣に座るに目を向ける。
「うちのお母さんも綺羅星になったって、銀さんが言ってたじゃない」
○○は味噌汁を口に流し込む。
母の記憶はないが、目の前に座る幼なじみらしい男が家族はいないと証言している。
「それとも嘘だったの? あれがうちのママン? 写真の人とは全くの別人に見えるけど」
写真に写る○○の母は、○○と瓜二つだ。
「あんなのからお前が生まれるわけねーだろ」
「じゃあ、誰?」
疑問はふりだしに戻る。
「定春のお母さん?」
○○は横で餌を食べている定春の頭を撫でる。
「定春、犬と人間のハーフだったアルか」
「犬っていうか、宇宙生物でしょ」
「宇宙人と人間のハーフだったアルか」
「いや、そうじゃなくて」
もぐもぐと新八は白米を食べ、もぐもぐと神楽は焼き魚を食べながら、定春の出生について議論し合う。
「もの食べながらしゃべるんじゃないの!」
定春の母疑惑を持たれたおばちゃんは、一瞬現れて再び消えた。