第6章 【第五訓】喧嘩はグーでやるべしの夕の話
「いい加減その腹立つ三文芝居やめねーと、今度はてめーらの頭を叩っ斬るぜ」
ゆっくりと刀を再び抜くと、切っ先を二人に向けた。
「望む所でさァ」
「やれるもんならやってみな!」
○○と沖田は立ち上がり、土方と対峙する。
三人の間に、テレビと同じようにバチバチという火花が飛び交う。
この三人に本気の斬り合いなんぞ始められたら、誰にも止めることは出来ない。
斬り合いが始まる前に近藤が口を挟んだ。
「落ち着け。トシも○○も。総悟も楽しんでないで、ここに座れ」
近藤は、○○と沖田に向けられた切っ先を指で挟んだ。
「チッ」
土方は刀をしまうと、あぐらを組み、タバコに火をつけた。
「どこに行ってた」
「何言ってんの。今まで出掛けてたのは、そっちじゃない」
「彼氏気取りでさァ。人のやることなすこと干渉するなんて、心の狭い男のすることですぜ」
「テメェは黙ってろ!」
肩をすくめ、沖田も土方と同じようにあぐらをかいて座った。
「昨日の夜から今日の朝、屯所にいなかったのはどういうことだって聞いてんだ」
その言葉を聞いて声を上げたのは、
「え、朝帰り!?」
近藤。
顔を青ざめさせながら、○○を見る。
その表情はまるでムンクの『叫び』さながら。
「てめーは知らんかったんかい!」
近藤は決闘により深夜までダウンしており、今まで○○の不在を知る機会に恵まれなかった。
「そう言う土方さんだって、気づいてなかったじゃないですかィ」
昨日、土方は取材対応のため事務仕事がとどこおり、夜半まで自室にこもって作業をしていた。
そのため、○○が戻っていないことに気づけなかった。
土方が知ったのは、『銀髪の侍』を捜索中。沖田に聞いてのことだった。
「相手は誰なんだ、○○! お兄さんに話してみろ!」
○○の両肩に手を乗せて、近藤は揺さぶった。
その表情は今にも泣き出しそうだ。
「誰がお兄さん!? てか、相手って! 何、変な誤解してんの!」
「近藤さんは黙ってろ! 話がややこしくなる!」
土方は近藤を制すと、○○に目を向けた。