第34章 【第三十三訓】一日局長に気を付けろッテンマイヤーさんの話
「テロ用心!」
拍子木を打つ通と近藤を先頭に、真選組の集団は大通りを練り歩く。
マスコットキャラ誠ちゃんは二人の後ろ。
○○は誠ちゃんの背中に横たわる、死体神楽の首に巻かれた手綱を手にして誠ちゃんの横を歩く。
○○の右に土方、誠ちゃんを挟んで左に沖田。
背後には隊士達を引きつれている。
真選組監察の頃には、こうして彼等に交じって街を歩くことなど出来なかった。
今になって隊士に混ざって人目をはばからずに歩ける日が来るとは、複雑なものだ。
「ぐ……!」
「あ、ごめん。か……死体ちゃん」
小さな唸りが聞こえ、○○は振り返った。
誠ちゃんが立ち止まったことに気づかずに○○が足を進めたため、手綱で首を絞めたらしい。
○○の視線の先には、神楽しかいなかった。
馬の上半身がいない。
「あれ? ぎ……誠ちゃん?」
○○は周囲に目を向け、その姿を捜した。
銀時は右手の居酒屋に入って行く所だった。
○○は手綱を離し、銀時のあとを追って店に入った。
「何してんだ、テメェ」
隣に座る○○に銀時は悪態をつく。
「おじちゃん、熱燗一本。あとおつまみ。お店で一番高いの頂戴」
「はいよ」
○○はおごりだと言って、銀時の機嫌を取る。
「勝手に頼んでんじゃねーよ。おやじ、熱燗だけでいい」
銀時は○○に鋭い目を向けた。
ご機嫌取りに持って来た地酒とおせちもそこそこ高価なものだが、銀時は目もくれなかった。
そもそも真選組の正月祝いの残り物という点で、決定的に受け入れがたいものがある。
食べ物じゃダメかと、○○は肩を落とす。
どうすれば銀時の機嫌が直るのやらと悩む○○だったが、杞憂だったようだ。
「枝豆と、それからアジのお浸しくれ。これくらいなら、おごられてやる」
銀時は口元を緩めた。
(これ、笑ってんのかなァ……? 笑ってんだよね……?)
ヒゲのせいで笑ってるのかどうなのか、よくわからない。