第35章 【第三十四訓】ホストクラブ『高天原』の話 其ノ一
○○は伸びをする。
朝の光がかぶき町に降り注ぐ。
○○は今、『スナックお登勢』に身を寄せている。
住む場所を探していると知ったお登勢が誘ってくれた。
万事屋を出てもなお、○○の給料から二階の家賃が賄われていることも知っている。
○○はお登勢の言葉に甘えることにした。
「おはよう」
○○は静かに万事屋の扉を開け、小さく声をかけた。
案の定、銀時はまだ寝ていた。
鼾をかく銀時の顔を見下ろす。
この人と出会わなければ、今でも屯所にいたはずだ。
彼と出会い、桂とも出会うことになった。
○○の知る桂は、危険な攘夷浪士だった。
しかし、今では過激な活動を一切していない。
穏健派でも過激派でも、攘夷浪士には変わりない。それはわかっている。
世話になった恩義を仇で返すことも出来ない。
もし桂が捕まったとしても、○○は助けないと決めた。
どちらか一方の味方にはなれない。
「銀さん」
○○は銀時の顔を見つめる。
「これじゃ卑怯だよね」
弱い自分に嫌気がさす。
銀時の返答は「コー、カー」という鼾のみ。
釣られて○○もうつらうつらとして来た。
昨夜は店から響く酔客の声でよく眠れなかった。
スナックで暮らすならば、慣れなければいけない環境。
まだ体が対応出来ない。
薄い意識の中、包丁とまな板が合わさる音が聞こえた。
おかしなことに匂いまで漂って来た。
「いつまで寝てんのォ!!」
襖を開けて見知らぬおばちゃんが乱入して来た。
○○の眠気は吹き飛ばされる。