第33章 【第三十二訓】鍋は人生の縮図であるの日の真選組での話
○○は味噌汁を作っていた。
真選組に拾われて間もない頃に土方に命じられて以来、日課となっている夕飯作り。
赤く染まる火を見ながら、○○は幼なじみだという男を思い浮かべる。
桂のことだ。
元気がないわけではなかった。
桂と高杉の抗争の日以来、考えていた。
銀時の怪我も大分良くなったため、銀時と神楽は万事屋に、○○は屯所へと戻った。
恒道館に身を置いている時は考えずに済んでいたが、屯所に戻れば嫌でも考えてしまう。
(桂と関わっていて、ここにいていいわけがない)
岡田から桂の遺髪と言って髪束を見せられた時、鳥肌が立つような感覚があった。
船上で無事な姿を見た時、心底安堵した自分がいた。
もしも桂が捕らえられた時、自分は彼を捨て置けるのだろうか。
今では穏健派になったとはいえ、かつては散々、テロ行為を行っていた。
捕えられれば処刑は免れない。
(もし、目の前で首を刎ねられでもしたら……)
想像するだけで暗澹となる。
攘夷志士は敵。真選組隊士として、その逮捕に貢献しようと張り切っていたはずなのに。
「○○」
無意識に鍋へと醤油を注ぎ込んでいる最中、後ろから声をかけられた。
振り返ると土方が立っていた。