第30章 【第二十九訓】妖刀『紅桜』 其ノ三
「ヘンタイィィィィ!!!」
「変態じゃありません」
「どう考えてもヘンタイだろうがァァ!!」
「しかし、仕方ありませんね」
罵りが功を奏したわけではないが、男は○○の背後へと回った。
捕えている女は丁重に扱えと、上司から命令を受けている。
「無理をなさるお人だ」
○○の手首を見て、男は呟いた。
どうにか縄抜けをしようと試みた結果、両手首はぐるりと血が滲んでいる。
「厠に行きたいの。仕方ないでしょ。出そうなの」
「下品な人ですね」
「お前に言われたくないわ!!」
男は木箱に結わえられた縄を解いた。
動ける。
「たァァァ!!」
自由を得た瞬間、○○は男の顔面に頭突きを食らわせた。
さらには、虚を突かれてよろけている男の股間に、○○は足の裏を叩きつけた。
「うぐっ」
と、小さな喚き声が聞こえる。
あとはスピード勝負。逃げて、逃げて、逃げるのみ。
○○は扉へと向かった。