第28章 【第二十七訓】妖刀『紅桜』 其ノ一
「ちゃーす! エリザベス先輩!!」
表から聞こえた声に、○○は耳を傾けた。
エ、エリザベス先輩……? と、頬を引きつらせる。声の主は新八だ。
まだエリザベスと一緒にいるのか、こんな時間に何をしているんだと、○○は思う。
「辻斬りの奴、来ましたか?」
「辻斬りに直接、桂さんのこと聞くなんて」
「ぎゃああああ!!」
延々と、新八の声のみが聞こえて来る。
新八とエリザベスも辻斬りを捜しているということがその言葉からうかがえるが、桂のこととは一体なんだ。
「オイ」
その時、新八以外の声が聞こえた。
まさかエリザベス? と思ったが、違うようだ。
なんだ奉行所の人か、と新八の安堵の声が聞こえた。
「お前らわかってんの? 最近ここらにはなァ……」
「辻斬りが出るから危ないよ」
さらに別の人物の声。
声だけで、○○は不穏な気配を感じた。銀時の目つきも鋭くなる。同時に新八の悲鳴。
ゴミ箱の蓋を弾き飛ばし、銀時は木刀を振り上げる。
刀が弾かれる音がする。
「妖刀を捜してこんな所まで来てみりゃ、どっかで見たツラじゃねーか」
「ぎっ……銀さん!」
「ホントだ。どこかで嗅いだ匂いだね」
背後から頭上に落とされる声。
その言葉で、○○にはその声の主がわかった。
盲目の剣士、人斬り岡田似蔵。