第28章 【第二十七訓】妖刀『紅桜』 其ノ一
「どう……む! ぐ……」
どうしたのと聞き終わる前に、○○は口を手で塞がれた。
喋るなと言われたかと思うと、体を抱え上げられた。
そのまま青い箱へと入れられる。ゴミ箱へ。
「何す――」
結局ゴミ扱いかィ! と文句をつけようとした○○の口を銀時は再び塞いだ。
そのまま銀時もゴミ箱へと入り、蓋を閉めた。
「誰か来たぞ」
○○の気づかぬうちに、銀時はその気配を感知した。
しばらくして、○○も気配を感じた。声は聞こえてこない。
聞こえて来たのは、シャーシャーと、刀を研ぐような音のみ。
こんな往来で刀研ぎ? でも刀を持っているなら怪しい存在だと、○○は頭を働かせる。
それにしても……と、眉間に皺を寄せ、銀時の耳元に小声で話しかける。
「銀さん、狭い」
○○は銀時に抱きすくめられる格好で入っている。
大きめのゴミ箱なので二人分のサイズはあるが、身動きを取ることは出来ない。
「あん? 狭くねーだろ」
「狭いよ」
○○は肩をよじらせる。
しかし、あまり動くと物音が立ってしまう。
「キツい……」
文句を垂れる○○に対し、銀時は涼しい顔で呟いた。
「○○の中の方が狭ェだろ。俺のはいつももっとキツく締めつけられてんぞ」
銀時は○○の下半身に目を向ける。
こんな状況下で何言ってんだァァ! と、○○は銀時の頭に頭突きをかます。
音が出ないのが不思議なくらいに、強烈にかます。