第28章 【第二十七訓】妖刀『紅桜』 其ノ一
「新しい刀?」
あぐらをかき、近藤は○○と向かい合って座っている。その横には土方の姿もある。
鍛冶屋を後にした銀時と○○は別行動を取っている。
日暮れ前に落ち合う約束をし、各々、とある刀を捜している。
最近、隊士の中で刀を買い替えた者はいないか。
○○はそれを尋ねに真選組の屯所に戻っていた。
「全員を把握しているわけではないが……俺は聞いていないな。トシはどうだ」
「いや、俺も知らねェ」
「そっかァ……」
刀のことならば、まずは真選組。
この近辺で目ぼしい刀が一番集まる場所は、ここを置いて他にない。
優れた得物は、優れた剣士の手に渡るもの。
捜している刀は名の通った業物。真選組に高値で売りつけようと目論む商人は多くいる。
盗まれた刀が転売されているのならば、ここにたどり着く可能性は少なくない。
だが、思惑は外れたようだ。
「新しい刀がどうかしたのか、○○」
近藤に尋ねられ、○○は小一時間程前のことを思い出す。
――大変すまぬことをした!!
と、銀時に小槌を飛ばした男は謝った。
依頼の電話をかけて来たのはその男。村田鉄矢。
妹の鉄子と刀鍛冶を営んでいるという。
依頼内容は、父・仁鉄が作り出した『紅桜』という刀を捜し出してほしいというもの。
仁鉄は江戸一番と言われた刀匠で『紅桜』は彼の作品の中でも最高傑作の呼び声が高い。
その刀が盗まれてしまったらしい。
『紅桜』はただの刀ではないという。
刀を作り上げたばかりの仁鉄が亡くなり、その後、刀を手にした者達も必ず凶事に見舞われた。
魂を食らう、妖刀。