第30章 【第二十九訓】妖刀『紅桜』 其ノ三
「出せェェ!」
○○は叫び続けていた。
高杉が出て行ってしばらくは無音だったが、次第に人声と足音がするようになった。
誰でもいいから誘き出す。縄を解かせるために。
「ここから出せやァァァ!!」
「うるさい人ですね」
叫び続けて小一時間、ようやく人が姿を見せた。
「岡田さんもつくづく困った人です」
○○はその顔を睨み上げる。
丁髷頭の男は大きな目で○○を見下ろす。
舐めるように○○を見る。
「大人しくしていなさい」
「厠に連れてけ!!」
縄を解かせる方法は常套手段。生理現象を訴える。
男は顔をしかめた。
「少しくらい我慢なさい。女性でしょう」
「我慢の限界なの!」
男は腕を組んだ格好で○○を見下ろしている。
その訴えが真実なのか、逃げるための方便なのか、考えているのだろう。
○○は言葉を続けた。
「ここで漏らすぞ!!」
男は眉間の皺を深くする。
「下品な人ですね……」
男は一瞬、虚空に目を向けた。
再度、○○に目を向けると、
「いや、しかし、漏らす所を見てみたい気も……」
ボソリと呟いた。
○○は大仰に表情を歪ませる。