第28章 【第二十七訓】妖刀『紅桜』 其ノ一
「どんな依頼なの?」
○○は銀時の横を歩きながら聞いた。
本来ならばスクーターで一っ走りだが、先日、銀時のスクーターは空中爆発事故を起こして大破してしまったため、徒歩での移動を余儀なくされている。
「あん? さーなァ」
――万事屋さんですかァァァ!
――早急な頼みがありすぐにお越しいただきたいィィィ!
――場所はァァァ!
電話越しでも耳をつんざく大声は、一方的に告げて切れた。
「行きゃわかんだろ」
どんな依頼だろうと、○○は期待をかける。
大活劇と報酬ガッポリ。○○の願いはそれだけだ。
「ここだね」
たどり着いた家屋には『刀鍛冶』の看板がかかっていた。
ガァンガァンと、鉄で鉄を叩く音が響いている。
いつぞやの平賀源外の工場もうるさかったが、こちらも負けてはいない。
銀時と○○は耳を塞いで家屋の中を覗いた。
「万事屋ですけどォ」
中には片膝を立てながら小槌を振る男性と、向かいで大槌を振り下ろす女性がいた。
交互に振り下ろされるたびに、金床との間にガァンガァンと音が響く。
「あんだってェ!?」
「万事屋ですけどォ!! お電話いただいてまいりましたァ!」
「新聞ならいらねーって言ってんだろーが!!」
全く会話が噛み合わない。
「バーカ、バーカ、ウンコ!!」
どーせ聞こえねーだろと、銀時は悪口を並べ立てる。
またガキんちょみたいなことをと、○○が呆れる横を小槌が一直線に飛んで来た。
「ギャア! 銀さん!」
顔面に鉄の塊を食らった銀時はバタリと床に倒れた。