第27章 【第二十六訓】フルーツポンチ侍VSフルーツチンポ侍の話
「どうして私まで走らなきゃいけないの! ていうか、アンタ、血痕」
「何? 結婚? 俺は結婚などしていないぞ! ○○殿に黙ってそんな……むしろ、俺の所までバージンロードを歩いて来るのは……いや、こんな状況では言うまい」
フッ、と口元を緩めている。
「結婚じゃねーよ、血痕! 後ろ見なさいよ! 逃げてんでしょ? 進行方向モロバレじゃない!」
「モロ出しだと? いつからそんなはしたない言葉を言うようになったのだ、○○殿!」
「あァもういいよ、モロ出しだよ、アンタの所在モロ出しだよ!」
「所在? なんだ、これは!」
ようやく自分の額からポタポタと血が滴っていることに気づく。
「というか、クラクラして来たぞ」
出血多量。
桂の顔は徐々に血の気を失った色になってきている。
「ああそうか、久しぶりに○○殿に会ったから」
クラクラするのも無理はないと桂は笑う。
「違うだろ!!」
建物の間の路地を抜け、○○と桂は追手から逃げる。
「どこまで走るのよ。もういい加減、大丈夫なんじゃないの?」
このまま走り続けたら、本当に出血過多で死んでしまうかもしれない。
というより、フルーツチンポ侍とは何なんだ。
「そうだな。そろそろ戻らないと掲示板に五千件書き込む時間が……ああ、結局一万件か。くっ」
「掲示板?」
桂が足を止め、○○も止まりかけた所でその声は聞こえた。
「桂ァ! どこだァ!」
フルーツチンポ侍の声が、かすかに届く。
「チッ、しつこい奴め!」
動物的勘。
既に桂の姿を見失ってから随分経っているはずなのに、確実に桂を追っている。
かすかな声だが、○○はその声に覚えがある。
「アレ? この声って……」
毎日聞いている声に似ている。