第27章 【第二十六訓】フルーツポンチ侍VSフルーツチンポ侍の話
「……なんだ、この声」
赤信号で止まっている最中、○○の耳に奇声が聞こえて来た。
徐々に大きくなる、ぬおおおおという声。
その声の主は横断歩道の向こう側、路地の中から現れた。
それは見覚えのある長髪。
「ヅラ!?」
声を上げると、長髪はこちらに目を向けた。
「○○殿!」
進行方向を決めあぐねている様子だった長髪は、○○に向かって一直線に走って来た。
全力疾走。目の前には赤信号の横断歩道。しかし桂は脇目も振らずに突進して来る。
脇目を振れば、車が左に見えるはず。
「待て、待て! ちょっ、待てよ! 止まれ! 止まれってェェェ!」
○○は両手のひらを突き出した格好で叫んだ。だが止まらない。聞いてやしない。
横断歩道に飛び出した桂は、顔面でフロントガラスを突き破った。
普通にぶつかれば脇腹に車体がめり込む形となっただろう。
車の突進に気づいた桂は、止めようとしたのか、相撲のような体勢で車に両手を突き出した。
そのための正面衝突。
「何してんの、アンタァァァ!」
白黒ライン上で転がる桂に、○○は駆け寄った。
桂はむくりと起き上がった。
「フルーツチンポ侍に追われている! 一緒に逃げてくれ!」
「は? フルーツチンポ?」
頭から血を垂れ流していてもなんのその、桂は走り出した。
その手に○○の手首を掴む。