第26章 【第二十五訓】一寸の虫にも五分の魂の話 其ノ二
(あとは任せた)
(あとは任せろ)
○○と土方は頷き合う。
木に駆ける近藤と土方。それを見て、○○も万事屋一行へ混ざろうと走り出しかけたが、バササと飛び立った黄金色を見て足を止めた。
瑠璃丸が飛んだ。
○○の頭上を越え、それは神楽の麦わら帽子の上へと着地する。
(ええええ!!)
悲鳴を堪え、○○は走り出した。神楽が気づく前に、後ろからこっそりと捕まえなければ。
しかし、○○がたどり着くよりも先に、銀時に見つかってしまった。
「頭に金蠅乗ってんぞ!!」
麦わら帽子を手に掴み、神楽の頭上を銀時は力一杯はたく。
「銀さん、ダメェェ!!」
○○は猛ダッシュで駆けると、銀時に体当たりを食らわせた。
銀時は仰向けに地面に倒され、○○はその上に覆い被さる。
「いってーな! あ?」
上半身を起こした銀時は、○○の後を追うように猛然と走って来るハチミツまみれの男を見た。その後ろにはマヨネーズ。
○○も体を起こして振り返る。目に入ったのは、瑠璃丸にチョップを食らわせる近藤だった。
「えええええ!!」
「え゛え゛え゛え゛え゛!!」
昨夜の確執が嘘のように、○○と土方はシンクロする。
走っている最中に木の根に足を取られた近藤は、前のめりに倒れてしまった。
瑠璃丸は神楽の足元に落下。神楽はそれを拾い上げた。
「神楽ちゃん! 汚いから触っちゃダメ! そういう汚いものは、この世の汚い部分に触れて来た大人の私に渡しなさい!!」
○○は神楽に手を伸ばすが、神楽は憤激した。
「汚くないヨ! こんなにキレーなのにそんな風に言うなんて、○○の心が汚れ切ってるヨ!!」
「汚れてるから! 汚れ切ってていいから! だから――」
「いくぜ定春29号!!」
「あああ神楽ちゃん!!」
大事に大事に抱えられ、瑠璃丸は籠に納められて連れ去られた。