第26章 【第二十五訓】一寸の虫にも五分の魂の話 其ノ二
翌日、再びカブトムシ探索が行われている。
○○は万事屋一行と行動を共にしている。
普通のカブトムシならば、いくら捕獲しても問題はない。
真選組の目的は瑠璃丸のみ。
国宝級の価値がある将軍のペットゆえ、いくら万事屋の仲間とはいえ教えるわけにはいかない。
見つけたらこっそり捕まえておこうと思ったが、見つけたのは前を歩く少女だった。
「見て見て、アレ。あそこに変なのがいるアル」
神楽の指さす先に、黄金色に輝く生きた宝石がいる。それこそ瑠璃丸。
○○は口をあんぐりと開ける。
普通のカブトムシならいくら捕獲しても構わないのに、なぜあの一匹を見つけるのだこの少女は。
銀時は金蠅、新八はオモチャじゃないのかと言い、捕まえようとせずに撤退した。
神楽だけはその黄金色を名残惜しそうに見ている。
○○が捕まえようとすれば、横取りされたと思った神楽が自分のものにしようとするだろう。
かといって、ここで見逃せばまた捜し出せるという保証はない。
神楽の後ろで瑠璃丸確保の方法を考えていた○○の体に、小石が飛んで来た。
出所に目を向けると、草の向こうから姿を隠した土方が覗いていた。
(そのガキをどけてくれ。俺等が瑠璃丸を捕まえる)
○○は頷く。
昨晩生じた軋轢が嘘のように、二人は目で会話をする。
「神楽ちゃん、ホラ、行こ! 銀さん達行っちゃうよ!」
○○は神楽の背を押した。
「あんな汚ったないのじゃなくて、もっと大物を銀さんが捕まえてくれるよ!」
渋々と言った感だが、神楽は瑠璃丸を諦めてくれた。
神楽が森の中へと消えるのを確認すると○○は振り返った。
草陰から土方と近藤が姿を現している。