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~月夜の紅~ 銀魂原作沿い小説

第26章 【第二十五訓】一寸の虫にも五分の魂の話 其ノ二


 ミノムシのように寝袋に包まり、四人は横になっている。
 壁に顔を向けて目を瞑っていた○○は、ぱちくりと目を開いた。

「眠れない」
「俺はもっと眠れねェよ、コノヤロー」

 ○○の呟きに、銀時は額に青筋を浮かべて答えた。
 ○○の隣では、ギュルルルと神楽の腹の虫が鳴っている。
 さらにその向こうで、銀時と新八の腹も釣られたように音を奏でる。
 空腹で眠れない三人。○○は三人の腹の音に妨害され、何度か目が覚めていた。
 二口しか食べていない銀時、一口も食べていない新八。
 神楽は○○と同じく一杯は平らげていたが、普段釜ごとご飯を食べる神楽には物足りない。

「何アルか、この匂い?」

 匂いを感知した神楽が上体を起こした。
 見えたのはバーベキューを楽しむ真選組の面々。
 万事屋追い出し作戦第二弾が発動されている。

「やっぱキャンプにはバーベキューだよな!」

 みなが一様に、笑顔で肉の焼けるコンロを取り囲んでいる。

「よォ旦那方、まだいたんですかィ?」

 肉や野菜の刺さった串を手にし、沖田が万事屋のテントへと近づいて来た。
 落としちまったと、沖田は串を地面に落とす。盛大な嫌がらせ。
 屈してなるものかと、酢昆布を火にかざして四人は対抗した。

 ○○の視線は土方に注がれる。
 嫌がらせをする土方に対し、○○の中に怒りが芽生えている。この所業、許すまじ。
 沖田ではない。ドSの沖田のあの程度の行動など許容範囲。あくまで矛先は土方。

「おい総悟、○○に何も言わなかったのか?」
「いっけねェ。忘れてやした」

 とぼけるように沖田は呟く。確信犯。
 ○○の分はあるからこっちに来い。
 沖田以外の隊士なら、誰でもその一言を添えて来る。
 何も言われなければ、自分も嫌がらせを受けている対象と捉えてしまうのが当たり前。

「自分で言いに行ったらどうです」

 沖田は背後を親指で示した。

「チッ」

 そんな女々しい真似は土方には出来ない。
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