第26章 【第二十五訓】一寸の虫にも五分の魂の話 其ノ二
「なにすんのォ、神楽ちゃん!?」
新八は頬を押さえて訴えた。
「蚊」
神楽は手のひらの潰れた蚊を見せた。
怒りを感じながらも、ここで平静を失ってはダメだと自分に活を入れ、新八は起き上がる。だが、反対の頬も叩かれた。
「蚊」
今度は銀時。新八の機嫌もだんだんと悪くなる。
○○は一人黙々とカレーを口に運んでいる。
やがて三人の手により足により、カレーの鍋がひっくり返される事態に及んだ。
無事に残っているのは、○○の手の中にある食べかけの一皿だけ。
三人の視線が○○に注がれる。○○は流し込むように口に入れた。
「ごちそうさまです」
餓えた狼達を前にして、のんびり食べていたら危険が迫る。
「テメェ、○○! 少しくらい分け与えようって気持ちになんねーのか!?」
「見損ないましたよ! ○○さん!」
「最低アル!」
「アナタ達の争いに私を巻き込まないで!」
ぎゃーすかぎゃーすかと、どつき合いが始まる。
「山崎もういい。効果はあった」
「へい」
喧嘩の発端は先程から覗いていた土方と山崎だった。
蚊を放ち、仲間割れをするように仕組んだ。万事屋連中を森から追い出すため。
もし出て行かなくても、嫌なことばかりあれば○○は真選組の陣営に来るだろうと、土方は目論んでいる。