第26章 【第二十五訓】一寸の虫にも五分の魂の話 其ノ二
「銀さん、それってヤキモ――アチチチチ!」
ヤキモチ。
みなまで言い終わる前に、銀時は新八を黙らせた。
「火は危ねーだろ! 乱暴が過ぎますよ!!」
顔面にあたってズボンの上に落下したのは、カレーを煮込むための焚き木。煌々と燃えている。
「焼き芋チになりてェっつっただろーが、今」
「言ってねーし! 焼き芋チって何だよ!!」
銀時は手のひらをフーフーと吹いている。
素手で掴んで投げつけたため、銀時自身も多少のダメージを負った。
「ったく、もう」
新八は溜め息を吐く。
ここで喧嘩を続けていても、何の得にもならない。
この子どものような男を相手にこちらまでムキになっていたら、終わりなど見えない。
新八は大人の対応を見せる。
「ホラホラ、カレー出来ましたから。美味しいものを食べたら、気分も変わりますよ」
新八はカレー皿四枚を手にし、二枚を○○に渡した。
白飯とカレーをよそい、新八は神楽に手渡す。
○○は銀時の分と自分の分を盛りつける。
カレーを食べた神楽はその味に文句をつけた。
イライラしている状態で人の文句を聞くと、イライラはさらに膨らんでいくもの。
銀時が神楽に詰め寄ると、神楽も挑発する。この二人ではどちらかが折れるという状況は望めない。
「ハイハイ、もうそこまで」
新八が止めに入る他にない。
「ご飯くらい楽しく食べましょうよ」
新八は自分の分のカレーをよそう。
「それにしても、あの人達、ホントにカブトムシとりに来たんですかね?」
真選組の人達。
ここに確実に答えを知っている人がいる。
新八は○○に目を向けた。
「そうだよ。カブトムシとり」
真面目くさった顔で○○は答える。新八はその表情を疑った。
本当にカブトムシとりだった場合、○○が一緒に狩りなど行うだろうか。
天下の真選組が職務時間に何してんだと、怒りそうなものだ。
真面目な顔が逆に嘘くささを演出する。
真顔のままカレーを頬張る○○を見ていた新八に、突然平手が飛来する。