第25章 【第二十四訓】一寸の虫にも五分の魂の話 其ノ一
暗くなるまで真選組は瑠璃丸を、万事屋一行は金になるカブトムシを捜したが、どちらも成果は得られなかった。
単独で瑠璃丸を捜していた○○の元に、一人の隊士がやって来た。
○○を捜して来いと土方に命じられたという。
そろそろ帰れと言う土方に対し、○○は残ると答えた。
しかも真選組の陣営ではなく、万事屋の宿営地に。
土方は目を引ん剥く。寝袋一つであの男と夜を明かすなど、見過ごせる行為ではない。
「アイツに襲われたらどうするつもりだ!」
「神楽ちゃんと新八君のいる前で襲うわけないじゃない!」
大体、銀サンに襲われても何の問題もナイっつーのとは言えない。
「それに、どう見てもこっちの方が危ないでしょ」
○○は周囲を見回した。
十人以上の屈強な男の群れ。一般人ならいざ知らず、日々鍛錬を繰り返す警察庁屈指の猛者共だ。
全員が結託して襲ってくれば、いくら○○でも太刀打ち出来るとは思えない。
「テメェは俺等警察を何だと思ってんだ!」
「あーそうだね。危ないのは一人だけか。この間も扉蹴破ってまで入って来た、一人だけだね」
「あ!?」
テメェが悲鳴なんか上げるからだろうと、土方は額に青筋を浮かべる。
「前科があるんだから、疑われて当然でしょ」
○○の言葉に土方の表情が固まった。
頬を引きつらせる。
「テメェ……まだ疑ってんのか?」
「疑ってないよ。確信」
○○はハッキリと見た。
目を覚ましたばかりのぼんやりとした瞳に、自分の着物の胸元を捲ろうとしていた土方の姿を。
それが土方との初対面であり、○○の人生最初の記憶。
そんなこともあったので、○○の部屋には特別に鍵が取りつけられた。