第25章 【第二十四訓】一寸の虫にも五分の魂の話 其ノ一
「それに……」
○○は空を見上げた。
もうじき完全に日が落ちる。
不安そうに空を見上げる○○を見て、土方は呟いた。
「○○、お前、夜に外に出て平気なのか」
○○は目を見開いた。
土方の表情から、○○を心配していることが見て取れる。
「なんで、そのこと……」
○○が屯所に拾われて間もない頃、夜の見廻りから帰った土方は縁側を歩く○○を見た。
大方、厠にでも行くのだろうと気に留めずに行き過ぎたが、ドサリと物が落ちる音がして振り返った。
そこには○○が倒れていた。
その後も玄関を出た所で○○が倒れたと、幾度か隊士に報告を受けた。
倒れるのは決まって夜。翌日、目を覚ました○○は前夜のことを覚えていないのが常。
そのため、近藤と銀時が決闘した翌日、○○が帰っていないと聞いた土方は顔色を変えた。
「自分で気づいてんだな。今は」
○○の反応は、自身の身に起こる事態に気づいている者のリアクションだ。
○○は頷いた。
「だからここじゃダメなんだよ。銀さんがいなきゃ」
銀時の傍にいなければならない理由がある。
「…………あ?」
意味深長な言葉を残し、○○は万事屋の宿営地へと走って行った。