第25章 【第二十四訓】一寸の虫にも五分の魂の話 其ノ一
「なんでィ。こんな所にいたのか、サド丸21号」
額を押さえる土方の横、床に落下した生物を沖田は拾い上げた。
沖田のペットであるサド丸21号は昨夜、籠から脱走して行方をくらませていた。
「○○に夜這いかけるために逃げ出したのか? しょーがねェ野郎だ」
沖田は人差し指でカブトムシを突く。
「この屯所内で○○に夜這いかけるなんて不逞の輩は、お前と土方さんくらいだぜ」
背中を掴み上げられているサド丸21号は、じたばたと手足を動かしている。
「何言ってんだ、テメェは!」
土方は額から手を外し、沖田に睨みを利かせた。
沖田はサド丸21号と戯れ、土方の存在などまるで意に介していない。
「よし、サド丸、今日も暴れるぜ。相手はどいつもこいつも、土方さんくらいちょろい奴等だ」
「ああ? ちょろいかどうか試してみるか?」
自室の入り口で行われるイザコザに、○○はワナワナと肩を震わせる。
「喧嘩ならよそでやれ!!」
枕元から目覚まし時計を取り上げると、土方の側頭部に向かって投げつけた。