第24章 【第二十三訓】隠し子騒動と盲目の剣士の話 其ノ二
「ホラ、新八君! そんなやり方じゃ、四隅の埃とれないよ! もっと細かく、手首を使って!!」
モップで床を拭きながら、○○は新八を指導する。
「○○さん、目的を忘れないで下さい」
真剣に拭き掃除に勤しむ○○に対し、新八はツッコミを入れる。
○○は歌い出しそうな陽気な雰囲気でモップを滑らせている。
スイイーッとモップを滑らせ、廊下を突き進む。
「あの人を捜すんですよ! わかってますか!?」
新八は○○のあとを追いかける。
○○と新八は使用人、神楽はメイドの格好で、大財閥の橋田屋へと潜入している。
銀時が飛び出してすぐに、橋田賀兵衛という老人が『スナックお登勢』を訪れた。
彼は誘拐された孫を捜しており、孫を連れ去ったという娘の写真を見せた。
その最中、当の娘が顔を出し、賀兵衛は彼女に暴力をふるって孫の居所を聞き出そうとした。
賀兵衛の態度に違和感を覚えたお登勢は、○○、新八、神楽に偵察を依頼した。
「子どもじゃなかったよ~」
「本当に歌ってるし! なんですか、その歌!」
誘拐されたという賀兵衛の孫こそが、今朝万事屋の前に捨て置かれていた赤ん坊だった。
銀時の子どもではなかった。育てる決心こそしたが、濡れ衣だったのならその方がいいに越したことはない。
「銀さんの子どもじゃなかったよ~」
ルンルンと踊り出しそうなステップでモップがけをする○○を見て、新八は頬を引きつらせる。
「そんなに嬉しいですか、銀さんの隠し子じゃなくて……」
一体、あの男のどこにそんなに惚れ込む要素があるのかと、疑問に思わずにはいられない。
「いい加減、目を覚まして下さい」
新八ははたきで○○の顔を叩いた。
「ぶっ! 何すんの、新八君!!」
「悠長に回ってる時間ないんですから、正気に戻ってもらわないと困ります!」
「わかってるよ! 大きな建物だからね、ちゃっちゃと掃除終わらせよう!!」
「違うでしょうが!! もう、神楽ちゃん、一発頬でも殴っ……」
正気を取り戻すには痛みを与えることが一番。
新八は振り向いたが、そこに神楽の姿が見当たらない。