第23章 【第二十二訓】隠し子騒動と盲目の剣士の話 其ノ一
「ネェ、銀さん」
銀時はカウンター横に突っ立ち、赤ん坊にメロメロになっている四人を冷や汗を垂らしながら見ていた。
○○もその横に並び、赤ん坊にメロメロになっている四人を冷静な目で見ている。
「あの子のお母さんに心当たりないの?」
両親揃って育ててあげるのが一番だよと、○○は銀時を諭す。
銀時が自分と関係を持つ前に生まれていた子だ。子どもがいるのならば身を引くしかない。あの子のためには仕方がない。
だが、身を引かないで済む方法も一つある。
「知らねェって言ってんだろ。誰だよ、母親。つーか、父親も誰だよ」
自分の子ではないことを、やんわりと銀時は強調する。
「それなら……」
自分の知らない女と銀時の子ども。
黒い感情が渦巻かずにはいられなかったが、神楽から赤ん坊を手渡された時に、心情に変化が起こった。
向けられた純真無垢な瞳。愛を欲するように自身に伸ばされる、小さな小さな柔らかい手。
穢れを知らない幼子が、ドス黒かった○○の心を浄化した。
「それなら、私、育ててもいいから!」
○○は銀時を見上げて宣言した。
銀時に子どもがいても、身を引かないで済むたった一つの方法。
力強い拳を握った○○の瞳は、輝きに満ちている。
銀時は頬を引きつらせた。○○だけが赤ん坊にメロメロになっていないので、安心していた。
父親と疑われてはいるが、赤ん坊を引き取る気満々の四人よりはマシだと思っていた。
よもや、母親に立候補しようとは。むしろ一番厄介だ。
「あっ! オイ、どこ行くんだィ!!」
銀楽やら金時やら万時やらと命名されかけている赤子を連れ、銀時は店を飛び出した。