第23章 【第二十二訓】隠し子騒動と盲目の剣士の話 其ノ一
人間の妊娠期間は十月十日。
万が一に孕んでいても、たとえ早産だとしても半年以上は出て来やしない。
そのようなことを、○○は周りの視線を気にすることなく叫ぶ。
「私はうさぎか!」
新八は眉間に皺を寄せた。何を言っているんだ、この人は。
しっぽりいきそうとは思っていたが、既にしっぽりいっていたということか。
「腐ってる」
新八の目は、銀時のみならず○○にまで注がれた。
自分の姉は結婚するまで操を守ると誓っているというのに。
その場合、あの姉は一生清いままではないかと思わないでもないが。
あれ、清いのか? とも同時に思うが。
赤ん坊は万事屋の前に捨てられていた銀時の子どもだと、お登勢は言う。
「だーから! 俺のガキじゃねェつってんだろ! なんだァ、その目はァァ!!」
○○はじっとりとした目を銀時に向けている。
「子ども拵えておきながら、のらりくらりと乗り換えるようなことするんだ? そーなんだ?」
銀時は言っていた。筋は通す方だと。惚れた女としかそういうことはしないと。
惚れた女に子が出来て、放っておく男のどこに筋が通っているというのか。
「私も簡単に捨てられるってことかな? そーなのかなー?」
空洞のような瞳を銀時に向ける。
銀時は○○の肩に手を置いた。
「だいじょうぶだァ。己を信じろー」
「どの口が言ってんだァァァ!!」
「ひはひ! ひはひ! はへふ!」
○○は銀時の口へ親指をつっこみ、両側へ思いきり引っ張る。
銀時の口は横長に限界まで開かれる。裂ける寸前。
「○○さん、落ち着いて! 気持ちはわかりますけど! 痛いくらいにわかりますけど!!」
新八は○○を背後から羽交い絞めにして銀時から離した。