第22章 【第二十一訓】百万編の詩より一吠えのワン🐾の話
銀時の姿を見て安心した神楽は、油断して定春の尻尾を離してしまった。
一直線に定春はドームの天井を駆け下り、雄たけびを上げながら○○達の場所へと突進する。
「いい? 私達があの子の覚醒を解く呪文を唱え終わるまで時間を稼いで」
一分。
その女性は時間を作ってほしいと銀時に言った。
銀時のスクーターと並走し、同じく○○が運転する暴走車に巻き込まれたスクーターにも、二人が乗車していた。
巫女姿の二人の女性。見た所、双子の姉妹らしい。彼女らも無傷で立ち上がった。
「誰?」
○○は首を傾げる。
「定春の、ォォォォ!」
定春の前の飼い主。
たったそれだけの言葉を言う前に、定春の攻撃を受けた。
「今は説明してる時間はねェ! 稼げる時間もねェ!」
銀時は青ざめる。
一分どころか、十秒たりともムリだと叫ぶ。
巫女姉妹は片方が笛を吹き、片方が呪文を唱え、二人並んで踊っている。
凶暴化した定春相手に、銀時、○○、新八は成す術なし。爪から逃げることしか出来ない。
破壊による風圧もあり、三人は散り散りになる。
「うわァァァァァ!!」
定春は新八に突進した。
「新八ィィィ!!」
「新八君!!」
新八の悲鳴と、神楽と○○の声が響き渡る。
寸での所で止めに入った銀時が、木刀で定春の爪を防いだ。
そのまま木刀を振り上げる。だが、下ろされはしなかった。
定春の手に叩かれ、銀時の体は飛ばされた。