第22章 【第二十一訓】百万編の詩より一吠えのワン🐾の話
昼を過ぎ、空は雨模様。
けれどもほんの小半時ほどで止み、空には再び日が照っていた。
「通り雨か。傘いらなかったかな」
仕事を終えた○○は空を見上げた。
帰ろうとした所に、店の中からその声が聞こえた。
「あの巨大犬?」
ニュースを見ての客達の会話。
○○は中へと入り、テレビへと目を向けた。
「……定、春?」
画面に映っている犬は万事屋の屋根に乗っかっている。
その場所にいる巨大犬が定春でない可能性など、天文学的数値よりも低い。だが、とても定春とは思えない。
それは牙をむいた鬼のような形相をしている。
映像は定春が江戸市街の方へ走っていく背中を映し出して途切れた。
○○は店を飛び出した。
*
「どきなさい! 暴走車がつっこみます!」
大江戸ドームの周辺は野次馬で取り囲まれていた。
○○はサイレンと声を響かせる。半円に並んでいた人々は悲鳴を上げながら真っ二つに割れた。
車一台分が通れるやっとの隙間をためらいなくつっこむ。
「あ!」
○○は急ブレーキをかけた。
キキキキキーっと、音と土埃を上げ、パトカーは停止した。二台のスクーターを巻き込んで。
「銀さん!」
車から降りた○○は、ひいたスクーターにまたがっていた人物の元へ駆け寄った。
野次馬が開けた先に、○○は銀時のスクーターを見た。慌ててブレーキを踏んだが間に合わず、側部へ体当たり。
さらにはその向こうを走っていたもう一台のスクーターも巻き込み、パトカーは停止した。