第20章 【第十九訓】でんでん虫虫エスカルゴの話
「すいませ~ん、遅れて」
ガララと扉が開き、入って来たのは依頼主である屋敷の主人。
「何やってんですかァァ! アンタらァァァ!」
彼は食卓内の異様な光景を目にして声を上げた。
銀時と○○と新八と神楽、謎のおじいさんと、お手伝いさんまでもがかたつむりを頭に乗せている。
「僕らこういうのあんまり慣れてないもので」
無作法な客人達を主人は笑って見逃してくれた。
「それより、さっそく父と仲良くなったようで安心しましたよ」
頭にかたつむりを乗せたおじいさんは、依頼主の父親だった。
痴呆の進んだ父を世話してもらいたいというのが、今回の依頼。
かつては江戸一番の花火師と言われていたが、倒れた奥さんの面倒を見ると引退してから、様子がおかしくなってしまったという。
「面倒見るって花火やめたってのに、そのせいでボケちゃうなんて」
縁側に腰掛け、新八は呟いた。○○はその横に座り、銀時はその横に寝転んでいる。
神楽とおじいさんは庭で飼い犬と戯れている。太郎という名の犬は、二人によって呼ばれるごとに名前が変えられていた。
「そう思うと、なんかおじいちゃんもかわいそ……」
おじいさんの身の上に新八は同情を示した。
だが、次の瞬間には、
「クソジジイぃぃぃぃ! 何やってんだァァァ!!」
その言われ様。
新八の視線をたどると、そこには木によじ登って塀を越えようとしているおじいさんの姿があった。