第4章 【第三訓】武装警察 真選組24時!!の話
「結局、全然テレビに映れなかった」
肩を落としながら、○○は歩く。
夕刻、○○は夕飯の買い出しに市中に足を伸ばしていた。
今朝から、真選組はテレビ番組の取材を受けていた。
その名も『完全密着! 武装警察 真選組24時!!』
片隅に映っていいと近藤には言われたが、土方と、土方に命じられた隊士に妨害され、一瞬たりともカメラの前に姿を現すことが出来なかった。
橋に差しかかった時、○○はまばらな群集を見かけた。
「せっかく――って、え?」
さして興味もなく通り過ぎようとしたが、その姿が目に留まり足を止めた。
「近藤さん?」
紛れもない、真選組局長、近藤勲の姿。
彼はふんどしを晒した無様な格好で河原に倒れていた。
「あれ? あの人……」
近藤から少し離れた所には、いつぞや『ホテル池田屋』で見た銀髪男が倒れていた。
「何があったんですか」
橋桁から下を覗いていた男達に、○○は問いかける。
「女取り合って決闘だとよ」
「決闘?」
近藤は朝の早い時間から屯所にいなかった。
他の隊士と同じように取材を受けてのことだと思っていたが、完全なる私用だったようだ。
女に振られることは毎度のことだが、決闘とは珍しい。
「こちとら昼からずっと見てたのによ、終わりがあれとはなァ」
男達は顔を突き合わせて苦笑する。
「どんな終わり方だったんですか?」
近藤は男から借りた木刀で戦いに挑もうとしたが、その木刀は縁の部分が削られていた。
振り上げた途端に折れてしまい、武器を失った近藤は、為す術なく相手の一太刀に倒れたという。
「それで、なんで二人ともあの状態……」
卑怯な手を使って近藤に勝ったのなら、銀髪男が倒れている理由はない。
独り言のような○○の言葉に対しても男達は答えをくれた。
チャイナ服を着た少女とメガネをかけた少年が、銀髪男に殴る蹴るの暴行を加えたという。
『ホテル池田屋』で銀髪男と爆弾を押しつけ合っていた、二人の子どもの姿を思い浮かべる。あの二人だろう。