第4章 【第三訓】武装警察 真選組24時!!の話
「ここに女のお前がいるなんてこたァ、誰にも知られちゃいけねーんだよ」
「え? それって……」
「誰も知らねーんだよ。ここに出入りしている隊士以外はな。テメェの存在を」
隊士達には、副長土方を始め、沖田ら隊長格が念を押して口止めしている。
彼等に逆らってまで、○○の存在を外に漏らそうなどという輩は真選組にはいない。
「嘘だ! だって、松平のとっつァんは――」
「知らねーよ」
松平のとっつァんこと、松平片栗虎。
警察庁長官で、警察組織のトップにあたる人物。
彼が屯所にやって来た時、○○は彼と対面した。
「ああ、あれはごまかした」
――おい、近藤、あの女はなんだ。
――女? ああ、とっつァんにも見えるのかい。
――どういう意味だ?
――ありゃ、自縛霊でな、屯所が建った時から住み憑いてんだ。
――そうか。いい霊媒師を知っている。明日にでも来るように手配してやる。
――そいつァすまねェな。
「って」
「ちょっ、待て! 挨拶したよ! 話もしたよ!」
「だから、自分はまだ生きていると思い込んでいる自縛霊」
「それでか……」
話をした時、可哀相に……と松平は涙ぐんでいた。
記憶を失ったことに同情する涙だと思ったが、どこか会話が噛み合っていないように感じた。
その涙は記憶を失ったことに対してではなかった。
自分が死んだことに気づいていないこと、その若さで死んだこと、それに対する涙だった。
「って、バカでしょ! アンタらの長官、バカでしょ!」
「ありゃ、確かにバカだ」
こめかみを押さえつつ、土方は溜め息を吐いた。
近藤と松平の会話を聞き、我が耳を疑った。
「安心しろ。とっつァんは娘のこと以外は疎い。○○のことも深くつっこむことはあるまい」
「少しはつっこんでほしいがなァ」
「ま、それは相手がとっつァんだからよかったことだ。他の上官に通じるとは思えない」
「絶対ェ通じねーよ。つか、通じてほしくない」
「だからな、○○。テレビ出演するなら、画面の片隅にこっそり映っていろ。自縛霊のようにな」
それならきっと上官達の目には留まるまい、と近藤は笑う。
「何もわかってねーな!!」
バカばかりに囲まれた土方の苦労は、誰にも推し量れない。