第18章 【第十七訓】どうでもいいことは忘れていい話
「撃ちたきゃ撃って下さい」
銀時の元へとたどり着いた新八と神楽は、大砲からかばうように銀時の前に立ちはだかる。
○○は銀時の横で身を屈め、その顔を覗き込んで微笑みかけた。
銀時の表情には困惑の色が浮かんでいた。
「な……なんで」
好きに生きていこうって言ったじゃないかと告げる銀時の頭を、新八と神楽は踏みつけた。
「好きでアンタと一緒にいんだよ」
自分達は、最初から好きに生きている。
「みんな、銀さんが大事なんだよ。自由に生きていいなら、銀さんの傍にいさせてよ」
銀時の記憶は戻らないかもしれない。それならそれで、構わない。
記憶の木が枯れてしまったのなら、もう一度、新しく育てればいい。
「どんな木でも構わないから、その木の枝にさせてよ」
植え直した木にも、小枝として存在したい。
○○は銀時から視線を外し、目の前に立った男を見上げた。
「トシ」
土方と沖田、他の真選組隊士も居並んだ。
○○の目の前に立つ土方は、一般市民は護らなければならないと新八に告げている。
撃ちたきゃ撃て、リストラ、ハゲ、との挑発に男は怒り心頭。再び大砲を構えた。
神楽が先陣を切り、沖田、新八、土方と大砲へと走って行く。
その背中に目を向けていた○○は、
「あいにく、俺ァ、一度枯れたモンを新しく育てようなんて甲斐性は持ち合わせてねーよ、○○」
間近から聞こえた声に、視線を戻した。
「ぎ――」
銀時は○○の前を駆け抜けた。
「新八、木刀もって来たろうな?」
「銀さん!」
銀時は木刀一本で大砲を破壊した。
「けーるぞ」
死んだ魚のような目をした、気怠げな銀時がポツリと呟く。
○○、新八、神楽の三人は、その背中を追いかけた。