第18章 【第十七訓】どうでもいいことは忘れていい話
「近藤さん、本当にストーカーしてたんですね」
いつだったか、○○は新八に聞いた。
ふんどし仮面の事件の際に、近藤が恒道館にいた理由。
妙の働くスナックに近藤が客として訪れて以来、付きまとわれているという。
「○○、俺をストーカーなどという犯罪者と一緒にするな!」
頬を踏みつけられた状態のまま、近藤は声を上げる。
「俺は堂々と会いに来たんだ! いなかったから、こたつの中で待たせてもらっていただけだ!」
妙の足の裏から逃れた近藤は、○○に弁明を施す。
「いなかったら帰れ。勝手にこたつにもぐるな」
「会えなかったからといって、簡単に帰れるような軽い気持ちではない!」
近藤は鋭い目をして訴える。
「俺はお妙さんを死の淵までも追い続ける! それくらいの気構えで会いに来ているんだ!」
「それがストーカーでしょうが!」
「ストーカーなどという軟弱者と一緒にしてほしくはない!」
純粋な想いでお妙さんに付きまとっているんだと、近藤は力説する。
「ストーカーはこいつの方だろう。いつもいつも、お妙さんの周りをウロウロと」
近藤は銀時を指さした。
「しばらく会わんうちに随分イメージが変わったじゃないか」
近藤は銀時に絡んだ。銀時は近藤から恋敵と見なされている。
銀時は近藤の言葉に耳を貸さず、無心に手元を見つめていた。
「銀さん?」
○○は銀時の視線の先を見た。
その手には近藤が持って来たアイスが握られていた。
「甘い物!」
甘い物をきっかけに、記憶を蘇らせることが出来るかもしれない。
新八は妙に甘い物を集めるよう求めた。
神楽は銀時の口にアイスをつっこむ。
「銀さん! 思い出して!」
正面から向けられる○○の視線を、銀時は見返した。
先程まで銀時の○○を見る目には多少の怯えが混じっていたが、今は感じられない。
「俺は……」
「銀さん!」
元に戻りつつある銀時の様子に笑顔を見せる、○○、新八、神楽。
そんな三人の間を抜け、妙が銀時の口に何かをつっこんだ。
「卵焼きよ」
甘めに味つけされた、妙曰く、卵焼き。一般的には、毒殺兵器。