第18章 【第十七訓】どうでもいいことは忘れていい話
「なに? 記憶喪失? それは前に聞いたぞ、○○殿」
本当にすまなんだなァ、と、桂は○○の肩に手を置いた。
「いや、聞いてないでしょ。新八君の話、ちっとも聞いてないでしょ」
○○は桂の手を払った。
「私じゃなくて、今度は銀さんが記憶喪失になったって言ってんの」
「なに? 銀時が? それは本当か? 何があったか詳しく教えろ、銀時」
「だから記憶がないって言ってるでしょーが。てか、桂さん、何やってるんですか」
桂は『暴れん坊侍』と書かれたのぼりを手にしている。客の呼び込みを行っているらしい。
攘夷活動の資金集めのために働いているという。
「そうだ銀時、お前もよっていけ。キレイなネーちゃん一杯だぞ。嫌なことなんか忘れられるぞ」
「これ以上何を忘れさせるつもりですかァ!!」
何か思い出せそう……と店に向かおうとする銀時に、新八は飛び蹴りを食らわせた。
今の衝撃で思い出せそうという銀時に対し、神楽と桂、それにエリザベスは三人で暴行を加えた。
「どう? 私は誰ですか?」
○○は屈み、銀時の顔を覗き込んだ。
「ら、乱暴女……」
「んだと、コルァァァ!」
初対面でいきなり掴みかかって来た○○に、銀時はいいイメージを抱いていない。
○○は再び銀時の胸倉を掴み上げる。
そんな二人の横に、突如として一台のパトカーがつっこんで来た。
「トシ! 総悟!」
パトカーから飛び出して来たのは、見知った二人。
真選組副長と一番隊隊長のコンビは、○○には気づかずに逃げる桂を追って走り去った。