第4章 【第三訓】武装警察 真選組24時!!の話
バタバタと板張りの廊下を踏み鳴らし、○○は走る。
「テレビの取材が来るって聞いたんだけどォ!」
うるさく障子を開くと、そこでは近藤と土方が何やら話し込んでいた。
「どうした、○○」
腕を組んだ格好のまま、近藤は訊ねる。
近藤勲――真選組局長であり、○○の父のような存在。
本人は兄のように思われていると勘違いしている。
記憶を失って混乱し、行く当てもない○○を屯所に置くことを決めた人物。
「だから、テレビの取材!」
ついさっき、屯所前で見張りをしていた二人の隊士に聞いた。
真選組の活躍を放送したいと、テレビ局から取材の申し入れがあったという。
「それがなんなんだ」
面倒臭そうに土方は口を開いた。
○○は嬉しそうに目を輝かせながら答えた。
「テレビで全国に訴えたい。『私を知っている人はいませんかァァァ!』って」
記憶が戻らないならば、自分を知っている人物に名乗り出てもらうしかない。
全国放送される番組に出て、自分を見つけてもらう、またとない機会。
「バカか、てめーは!」
だが、案を聞いた土方に怒鳴られた。
「バカってなによ! バカって言った方が、バカなんだから!」
「ガキか!」
稚拙な言い争いになりそうな二人に終止符を打ったのは、近藤の一言。
「そうだな。バカはトシだ。だが、○○の提案を呑むわけにはいかない」
さらりとバカと言われ、土方は頬を引きつらせる。
妹のように可愛がっている○○には、近藤はとことん甘い。
「なんで?」
そんな近藤を父のように慕う○○も、彼の言うことには耳を傾ける。
「その番組が上官の目に触れることになったら、大目玉を食うことになるからな」
「そういうこった」
上官――つまりは幕府のお偉方。