第18章 【第十七訓】どうでもいいことは忘れていい話
手術は無事に終わり、銀時は病室へと運ばれた。
銀時は大して怪我は負っていないようだった。
包帯の巻かれた頭以外に外傷はなさそうだ。
「心配かけて! もうジャンプなんて買わせないからね!」
「うん、私が買って来る! 銀さんは私が買って来るまで、永遠に待ってなさい!」
腰に手を当て、神楽は母のように銀時を叱る。
同じ格好で、○○はその隣に立っている。
「えらい目に遭いましたね」
銀時の様子に安堵する新八。同様にみな、安堵していた。
だが、銀時から発せられた第一声に、みな一斉に凍りついた。
「一体誰だい、君達は?」
銀時は困惑の表情で五人を見回した。
その顔はからは普段の気怠さが感じられない。目つきも鋭く、銀時らしくなかった。
記憶喪失――○○の頭にその言葉が浮かぶ。
「オイィィィ! バカ言うな! 真似してるだけでしょ? 私の真似してるだけでしょ!」
大声が頭に響くのか、銀時は顔をしかめている。
「ダブルで記憶喪失なんてあってたまるかァァァ!」
「○○さん、落ち着いて!」
喚く○○を新八はなだめる。
「とにかく、先生を呼びましょう!」
頭を打った影響で、銀時は記憶を失くしてしまっていた。
事故前後の記憶だけでなく、自分の存在すら忘れてしまっているため厄介だという。
自分の存在すら忘れてしまっているもう一人は、銀時に食ってかかった。
「私も厄介バージョンだよ! 厄介と厄介のコラボなんて、どんだけうちら厄介かけてんの!」
○○はベッドに上がり、銀時の胸倉を掴んで揺すった。
「思い出せ! 今すぐ思い出せ! そして私の記憶も蘇らせろ!」
「ちょっ、やめて下さい!」
銀時は眉をひそめる。
「○○さん、銀さんのせいじゃないですよ!」
新八は○○を羽交い絞めにして止めた。
銀時は恐怖で青ざめている。