第17章 【第十六訓】ドリームキャッチャーな話
「あんまり心配させんな」
銀時は○○の頭に手を置いた。
その重みに、○○の不安は掻き消されていく。
「そっか……」
○○はうずくまった姿勢のまま、銀時を見上げる。
「○○……?」
銀時はたじろいだ。
見上げる瞳は昔の○○を思い起こさせるものだった。物静かで、消極的で、引っ込み思案。
江戸で再会してからのような、気の強さの見える瞳ではない。
穏やかな陽気の中、何時間でも茶屋でぼーっとしていそうな、歯牙にもかけていなかった頃の○○。
「もう大丈夫」
○○はゆっくりと立ち上がった。
その顔はまだ青白いが、表情は今の○○のものだった。
銀時は溜め息を吐きながら、○○に背を向けてしゃがんだ。
「乗れ」
「へ?」
○○は目をしばたたいた。
「そんなフラフラの状態で歩いてたら、家に着く前に朝になっちまう」
早くしろと、銀時は○○を急かす。
「その代わり、喋るなよ。気ィ失ってる振りしてろ」
意識を失っているわけでもないのに負ぶっているなどと知れたら、新八や神楽にどんな冷やかしを受けるかわかったものではない。
○○がその背に体を預けると、銀時は軽々と立ち上がった。
傍らに落ちていた○○の木刀を腰に差す。自身の『洞爺湖』と、二本の木刀が銀時の腰に収まる。