第17章 【第十六訓】ドリームキャッチャーな話
月明かりに照らされた橋の上。
○○は立ち尽くしていた。
――○○
待って。
言いたくても、口が動かない。
追いかけたくても、足が動かない。
行かないで。
去り行く背中に手を伸ばす。
――○○
待って。
行かないで。
私は――
突然の恐怖に、○○は膝を折る。
手を伸ばすと、何かに触れた。
○○は目の前のものにしがみついた。
目の前にはあるが、目には入っていない。
藁をも掴む気持ちで力をこめる。
手が震える。
「○○」
○○は顔を上げた。
目の前に見えたのは、銀時の顔だった。
「銀、さん……?」
○○が掴んでいたのは、銀時の着物の裾だった。
銀時は中腰になり、○○の顔を覗いている。
「銀さん……」
○○は周囲を見回す。
『夢幻教』の総本山にいることを思い出す。
斗夢のインチキを暴く作戦を立て、各々配置につくために厠の前で別れたことを思い出した。
極悪人成敗へイザ行かんと、表に出た所で記憶が途絶えている。
「今度はすぐに気づいたじゃねーか」
青白い顔をしているが、はっきりとした口調に安堵する。
銀時は○○を捜していた。斗夢のインチキを暴き、新八や神楽とは合流したが、○○が現れない。
大方、騙されていたことを知った信者達に混ざり、斗夢をボコボコにしているのだろうと思ったが、群衆の中にも○○の姿は見つけられなかった。
○○が見当たらないと、皆で手分けして捜していた。
屋敷の縁側で青い顔をしてうずくまっている○○を銀時は見つけた。
「あの時はいくら呼んでも目ェ覚まさねーから、背負って帰るしかなかったけどな」
近藤と決闘したのち、新八と神楽にボコ殴りにされ、銀時は気を失った。
目を覚ますと、そこには近藤ではなく、幼なじみの女が倒れていた。何度名前を呼んでも目覚める気配はない。
銀時は○○を背負い、万事屋へと連れ帰るしかなかった。