第17章 【第十六訓】ドリームキャッチャーな話
「ふふふ」
「何笑ってんだ。気色悪ィ」
「笑ってないよ」
「笑ってんだろ、落とすぞ」
「笑ってないってば」
夜の闇から救ってくれたのは、間違いなく、この人だ。
前を見て進む決心をさせてくれたのも。その背に頬を埋め、目を瞑った。
「銀さん、ありがとう」
○○はハタと目を開いた。
「銀さん、私、前にも背負われて帰ったんだよね?」
○○が万事屋で目を覚ました前夜、○○を背負って連れ帰ったと、先程銀時が言っていた。
「なんだァ、これからも負ぶってもらおうとか思ってんのか? 次はねーぞ」
「思わないよ、そんなこと」
あの夜、○○はずっと気を失っていた。
けれど、背負われて思い出したことがある。
背中のぬくもりを感じながら、聞いた言葉があった。
「銀さーん!」
「銀ちゃーん!」
遠くから新八と神楽の声が聞こえた。
「もう黙ってろよ。家に着くまでに喋ったら、叩き落とすからな」
○○は目を閉じた。
その背のぬくもりだけを感じる。暖かく、心地よい。大きな背中。
ぬくもりの中で聞いた言葉を思い出す。
――死ぬな。
そんな大袈裟な心配をされるほど体調が悪く見えたのだろうかと、○○は思う。
記憶のぬくもりと、今感じているぬくもりが別のものだと、今の○○は知る由もない。