第16章 【第十五訓】美味しいものほど当たると恐い話
「失礼する」
真後ろで突然扉が開く。○○は体を硬直させた。
頭上から降って来たのは、つい先程耳にした声だ。
「ヅラ!」
入って来た人物を見て、銀時は声を上げた。
「ヅラ!」
「桂さん!」
神楽も、新八も。
○○はゆっくりと振り返った。
そこにはやはり、あの長髪。
「銀時! 貴様がなぜここに! ○○殿、銀時と行動を共にしていたのか? なぜ銀時と! 確かに、文には銀時がお主と会いたがっているとは書いた。だが、文を出したのは俺だ。俺の所にも顔を出してもよいではないか! というか、文が届いた頃には、もう銀時は行方をくらませていたはず。どうやって会ったのだ?」
○○の顔を覗き込み、桂は捲くし立てる。
「ヅラァァァ!」
銀時はベッドから飛び上がると桂に向かって飛び蹴りを食らわせた。
蹴られた勢いのままに桂は廊下へと転がった。
「貴様、いきなり何をする。ここがどこだかわかっているのか? 病院だぞ。ケガを治す場所だぞ」
「お前が○○を呼んだだと? いい加減なこと言うな! 殺すぞ」
桂は腹部を押さえながら立ち上がった。
「いい加減なことなどではない。『攘夷戦争は一時終結し、今の江戸は安全だ。だから一度来たらどうか……と、銀時君が言っていました』と確かに書いた!」
「誰がそんなこと言った! 人の名前を勝手に使うな!」
入院患者達が、何事かと二人を取り巻いている。
「う、嘘ではない! 此奴はニワトリと変わらぬ脳みそだから昨日のことも忘れているやもしれぬが、確かに言ったぞ!」
桂は○○に視線を向け、うろたえながら言い訳の言葉を並べた。
「テメェ、うぜーよ! その態度が全部白状してるよーなもんじゃねェかァァ!」
銀時は桂の襟元を締め上げる。