第16章 【第十五訓】美味しいものほど当たると恐い話
息を切らし、○○は病室に飛び込んだ。
肩で息をしながら、扉を閉める。
四人の目が一斉に○○に向いた。
「どうしたんですか、○○さん」
指でメガネの端を上げながら、新八が聞いた。
「謎のオッさんに襲われたアルか?」
「おいおい、勘弁してくれよ。なんで病院にまで謎のオッさんがいるんだよ。俺をストーキングして来たのかよ」
神楽はまた、もっさもっさとバナナを食べていた。
「ぎ、さん……」
○○は視線を上げ、銀時に目を向けた。
銀時は耳をほじくり、いつもの死んだ魚のような目で○○を見ていた。
「か、かつ……」
桂は「なぜ江戸に」と言っていた。だとしたら、桂は○○と同郷なのだろう。
そしてこの男、坂田銀時も、○○と同郷だ。ならば、十中八九、桂と自分のことを知っている。
敵として追っていた桂は、自分と関係のある人物なのか?
「かつ……」
「カツカツカツカツ何アルか。カツ丼なら私も食べたいアル。バナナは飽きたヨ」
「飽きたんなら、もう食べないでくんない? それ、俺への見舞いの品だから」
「うっせー、バナナは私のものアル」
神楽はバナナの皮を長谷川に投げつけた。
「何!? 逆ギレ!? 理由なき反抗!?」
目の前でバナナの皮合戦が繰り広げられる。