第16章 【第十五訓】美味しいものほど当たると恐い話
長谷川は先日、謎のオッさんの襲撃に遭って車が爆発し、体中を負傷したという。
「なんですか、謎のオッさんって」
長谷川のベッドの枕元から、銀時、○○、神楽の順で着座して話をする。
新八は三人の背後のベッドであぐらをかいて座っている。
「本当は身に覚えがあるんじゃないですか? 謎の人妻に手を出したとか。オッさんは謎のオッさんじゃなくて、謎の人妻の謎の亭主だったとか」
「そんな覚えはねーよ。つか、誰が謎で謎じゃねーんだかわかんねーよ」
寝巻きの裾を引っ張られ、○○が視線を向けるとよだれを垂らした神楽がいた。
視線をたどると長谷川へのお見舞いの品のバナナがある。
○○は銀時の寝間着の裾を引っ張る。バナナを示す。
「ねェ、なんで人の見舞いの品、あたり前のように食べてんの?」
銀時から○○、○○から神楽と新八へと、黄色い曲線が手に渡る。
みんなでもっさもっさとバナナを食べる。
「長谷川さん見てたら、食中毒如きで苦しんでた自分がバカらしく思えてきましたよ」
「本当にね。退院したらすぐに仕事出来るんだし」
就職先が見つからず、見つかってもいつも何者かに邪魔される。
長谷川の境遇に比べたら、一時の入院なんてどれだけマシなことか。