第16章 【第十五訓】美味しいものほど当たると恐い話
「あゝ、入院費が……」
○○は顔を手で覆った。
大江戸病院のベッドの上で、○○は半身を起こして座っている。
腐ったカニの処分をお登勢に頼まれたが、銀時の「ギリギリ食べられる」という言葉を信じた結果が、食中毒。
銀時、○○、新八、神楽は、仲良く病院に運び込まれる羽目になった。
金はかかるわ、仕事は出来なくなるわ、踏んだり蹴ったり。
「完全に腐ってたじゃねーかァ!!」
「なんでも人のせいにしてんじゃねェ!!」
病室の真ん中では、ワーギャーワーギャーと新八と銀時が言い争っている。
窓際のベッドでは神楽が病院食を掻き込んでいる。
「看護婦サーン、おかわりィィ!!」
茶碗を差し出しながら神楽が入り口に声をかけた。
○○のベッドは入り口から見てすぐ右手。
視線を向けると、そこには担当ナースの内野さんの姿があった。
それから、彼女に支えられるようにして立っている、松葉杖のグラサン男。
「アレ? 長谷川さん?」
銀時と新八も言い合いをやめ、彼の姿に目を向けた。
彼は全身を包帯でグルグル巻きにされている。
「長谷川さんも入院してるんですか」
長谷川は神楽の隣のベッドに腰を下ろした。