第15章 【第十四訓】メガネがないと明日も見えない話
「銀さん、やっちゃったもんは仕方ないよ」
「結婚はホレるよりなれアルヨ」
「私達は出て行くよ。新八君、しばらく恒道館にいさせてね」
○○は神楽の頭を撫でた。
新婚夫婦の家に居候するわけにはいかない。
「こういうことなら、仕方ありません」
新八はメガネを上げた。
「勝手に話進めんな!」
銀時は頑として認めず、女性との間には何もなかった、名前も知らないのに結婚なんてと言い張っている。
「身体は知ってるくせにさァ」
「イヤなこと言うんじゃねーよ! それからソレ、銀サンじゃねーぞ!」
女性は定春の顎に手を添えていた。
眼鏡がないとダメだわと言いながら、彼女はスリッパを右耳に充てる。
「もしもし、さっちゃんですけど」
ようやくきちんと電話に出た彼女は、さっちゃんと名乗った。
「大丈夫かな、さっちゃん。この天パ、見えてないでしょ。旦那がこんな頭だって知ったら、先方さんから願い下げかも」
○○は銀時の髪の毛を見つめた。
「誰が旦那だ! 俺ァ知らねェっつってんだろ」
「酔った勢いでやりましたなんて、とんだ三下の言い訳じゃない」
○○は納豆を取り、ねりねりと練り始めた。
「ちゃらんぽらんしてても、筋は通す人だと思ってたけどね」
銀時は言葉を詰まらせる。
無言のまま立ち上がると、居間へと姿を消した。
出て来ると、銀時は寝巻き姿から袴姿へと着替えていた。
「オイ」
食卓には目もくれず、さっちゃんの背中へと声をかける。
「こんな俺でよかったらもらって下さい」
さっちゃんは銀時の手を掴むと、銀時を強引に連れて出て行った。
「神楽ちゃん、今晩からは、大きな部屋で布団敷いて眠れるよ。早くここよりいい新居見つけて、二人で暮らそうね」
○○は神楽に声をかける。
神楽は居間で天井を見上げていた。
「神楽ちゃん? どうしたの」
○○が声をかけると、神楽は振り返って天井を指さす。
「○○、新八ィ、アレ」
新八と○○は居間に入り、神楽の指さす所に目を向けた。
そこには大きな穴が開いていた。
「さっちゃん……天から落ちて来た天女かも」