第4章 自分の大切な人を心配させないように
「男の人へのプレゼント?」
アリアはおうむ返しに聞いてきたカルラにこくりと頷いた。
エレンとミカサにも会いに行こうとイェーガー家を訪れたアリアとアルミンは熱烈な歓迎を受け、お昼ご飯をご馳走になっていた。
食事も終わり、片付けもひと段落したころ、アリアは思い切ってカルラに聞いたのだ。
「男の人へのプレゼントで喜ばれる物ってどんな物だと思いますか?」
リヴァイへのお礼のプレゼントをなににしようか悩んでいたことを不意に思い出した。
美人で気立もよく、さまざまなお客と話す酒場で接客をしていたカルラならなにかいい案をもらえるかもしれない、と言う希望を込めて。
「姉さん、だれかにプレゼントを贈るの?」
不思議そうにアルミンは首を傾げる。
「うん。お世話になったから、なにかお礼がしたいなって思って」
話の内容が気になるのか、エレンとミカサもアリアの周りに集まる。
洗い物を終えたカルラはエプロンで手を拭きながら椅子に座った。
「男の人にプレゼントねぇ……」
なんとなく意味ありげな視線を送られる。
その視線の意味を理解してしまい、アリアは大慌てで口を開いた。
「そ、そういうのじゃないですから!! あくまで、そう、すごいお世話になったってだけで」
「私はなにも言ってないわよ?」
「アリア、顔が真っ赤」
「熱か?」
一人勝手に慌てるアリアに純粋な子どもたちは心底謎だ、と言いたげに彼女を見上げた。
冗談よ、とくすくす笑ってカルラは言い、少し悩む。
「その人がどんなものが好きかはわからないの?」
「はい。好きなものを聞くほど親しくはないので……」
言いながら、アリアはリヴァイを思い浮かべた。
考えてみれば、彼のことをほとんど知らない。
知っていることといえば地下街出身であることと粗暴で目つきが悪くて、でも強いこと。それと名前。
必要最低限のことしか知らないのに、よくお礼をしたいと言えたものだな。
過去の自分の行いを思い出し、アリアは頭を抱えた。