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雨上がりの空をあなたと〈進撃の巨人〉

第4章 自分の大切な人を心配させないように



「姉さんはかっこいいんだ! ぼくたちのために戦ってくれてるんだ!! なにも知らないくせに、勝手なこと言うな!!」

「……アルミン」


 アリアはぎゅっと唇を結び、グリュックを優しく引いた。
 この気持ちを早く伝えないと。


「アルミン」


 アリアは目を細め、アルミンとそのいじめっ子たちに近づいた。


「姉さん!」

「ゲッ!」

「やばい、逃げろ!!」


 アリアの姿を見た途端、いじめっ子たちは蜘蛛の子を散らしたように逃げ出した。
 さすがにほかの人にいじめを見られるのはよくないとわかっているのだろう。


「姉さん、なんでここに」

「休暇をとったの。アルミンたちに会いに」

「もう、大丈夫なの?」


 なにが、とは聞かなかった。

 きっとアルミンは色々なことを理解している。
 壁外調査から帰ってきた姉の顔を見て、手紙を書くのをやめてしまった姉にいったいなにがあったのか。
 わかっていながら、それを口にはしない。

 アルミンの心遣いにアリアは微笑んだ。


「うん。もう大丈夫だよ。ありがとう、アルミン」


 アリアはアルミンをそっと抱きしめた。
 驚いたようにアルミンは動きを固めたが、やがてアリアの背に手を回した。


「おかえり、姉さん。無事に戻ってきてくれてありがとう」


 アルミンの肩に顔を埋め、アリアは頷いた。


「ただいま。……ただいま、アルミン」


 生きて帰ってくることができた。
 それが嬉しいと、よかったと思ったのは――今日が初めてだった。



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