第4章 自分の大切な人を心配させないように
「立てるか?」
「あ、はい! 大丈夫です」
パタパタと服についてしまった土を払いながら立ち上がる。
もしリヴァイに助けられなかったらこんな風に立ち上がることはできなかっただろうし、そもそも死んですらいたかもしれない。
だが助けられたおかげで無傷だ。
「でも落下してるわたしをどんな風に助けたんですか? ぐるんぐるん回っててなにがなんだか……」
互いに無傷でいるなんて、そう簡単にできるものではない。
浮かんだ疑問をそのままぶつけると、彼は少し面倒くさそうな顔をしたあと渋々口を開いた。
「特に特別なことはしていない。ただ担いで、ガスで勢いを殺して着地しただけだ」
人を1人担いで立体機動装置を操る。
なんてことないように言っているが、難しすぎるだろう。
エルヴィンやハンジ、アリアの周りにいる人はほとんどがリヴァイの立体機動の腕を讃えている。素晴らしい、と。
本当にその通りだ。
「……とにかくもう戻るぞ」
「立体機動装置は使えないから……ここから歩いて戻るのか……」
アリアとリヴァイの上ではビュンビュンとほかの兵士たちが飛んでいる。
立体機動さえできれば広けたところまであっという間なのだが、それができず、徒歩となるとかなり時間がかかる。疲れるし。
しゅん、とアリアは肩を落とした。
「…………」
さすがのリヴァイもここでアリアを1人残して飛びされない。そこまで人の心を捨ててはいない。
「抱えて飛んでやろうか?」
「エッ」
リヴァイの脳内にはアリアを肩で担ぎ、立体機動で飛んでいる姿が浮かんでいた。
リヴァイにかかれば1人担ぐくらい造作もない。
そう思い提案すると、アリアは大きく目を見開いて勢いよく首を横に振った。