第4章 自分の大切な人を心配させないように
「やぁ、リヴァイ!」
苦笑するエルヴィンの斜め後ろで仏頂面のまま立つ男にハンジは手を振る。
「…………」
しかしなにも返ってこない。
入団当初よりは1mmくらい角が取れたはずだが、返事をしてくれるにはまだまだなようだ。
「って、あれ、アリアと会わなかったの?」
実家に行くなら上官への許可が必要なはず、と首を傾げたハンジにエルヴィンは「あぁ」と頷く。
「ちょうどさっき会ったよ」
言いながら、エルヴィンは意味ありげな視線をリヴァイへ寄越した。それに不機嫌そうに舌打ちが返される。
その視線の意味がわからず、ハンジは首を傾げた。
「いや、なんでもない。それより昼食に行くんだろう? いっしょに行ってもいいかな?」
「んん?? うん、まぁいいけど……」
引っかかる態度が気になるが、どうせ聞いてもはぐらかされるだけだろう。
ハンジとモブリットは「もちろん」と言うように頷いた。
「いつの間に彼女と仲良くなっていたんだ?」
歩き出したハンジとモブリットの背中を追いながら、エルヴィンは小声で斜め後ろのリヴァイに聞く。
「……前、立体機動訓練中のあいつを助けたことがあった」
抑揚のない声で、端的にリヴァイは言った。
リヴァイとエルヴィンの頭にはさっきすれ違った少女がいた。
「なるほど」
「面倒くさいことになるから絶対にクソメガネには言うなよ」
好奇心の塊のような女にバレたらどれだけ面倒くさいだろうか。
リヴァイの低い声にエルヴィンは喉の奥で笑った。
「もちろんさ」