第4章 自分の大切な人を心配させないように
さて、これからなにをしようか。
ぽつん、と兵舎の前に立ち、去っていく馬車を見つめていたアリアは悩む。
今日は1日休息日としていたが、なにかしていないと落ち着かない。
(……あ、そうだ)
せっかくの休息日ならばあそこへ行こう。
アリアは閃き、くるりと踵で回った。
壁外調査から帰ってきてから1週間。弟の元へ帰ろう。
(まずはエルヴィン分隊長に報告しとかないと)
外出届を出すためにアリアは来た道をのんびりと戻っていく。
あの夜、暖炉の前でエルヴィンと話し、アリアの心はずいぶん軽くなった。
どれだけ嘆いても生きていくことしかできないのだとわかった。そして、これからどうやって生きていくべきなのかもわかった。
その礼も伝えよう。
(わたしが正しいと思う方は……)
アリアの目的はアルミンに海を見せることだ。
選択の先にその未来があるかどうか。それがアリアの選ぶ道だ。
「お、アリア!」
第1分隊執務室へ戻っている途中、前を歩いてくるハンジに呼び止められた。
立ち止まり、敬礼をしかけるが、「楽にしてよ」という一言に踏みとどまった。
「ハンジ班長、こんにちは」
「ねぇ、アリア。私たちこれから昼食に行こうと思ってるんだけどアリアもどうだい?」
ハンジと共にオリヴィアの実家へ行ったときから、なにかと彼女はアリアのことを気にかけてくれていた。
今もニコッと笑うハンジと、その隣でモブリットが優しくアリアに微笑んでいる。
しかしアリアは眉を下げて首を横に振った。