第3章 正しいと思う方を
アリアは目だけでエルヴィンを見た。
暖炉の炎に照らされた顔にはなんの感情も浮かんでいない。そのときのことを思い出しているのか、目を閉じている。
「そうしなければここでは生きていけなかったんだ。これが最善策だ、これが夢への道だ、そう言い聞かせなければ、自分を騙さなければ、私の心は簡単に折れてしまった」
エルヴィンの目が開く。
薄い金色の睫毛に囲われた青い瞳がアリアのほうを向いた。
「選ぶしかない選択を迫られたとき、どちらを選んだとしても後悔はつきまとう。それがこの世の理だと、私は考えている。これが君へかけるに正しい言葉かどうかはわからないが……」
エルヴィンの瞳の中に映るアリアの顔が緩やかに歪んだ。
「せめて後悔をするのなら、少しでも自分が正しいと思うほうを選んだほうがいい。私たちは仲間を殺すことでしか前に進めないのだから」
エルヴィンは椅子から立ち上がると、アリアの頭を優しく撫で、「そろそろ寝なさい」と言い、談話室を出て行った。
1人残されたアリアはしばらく炎を見つめていたが、やがて静かに腰をあげた。
重いため息がアリアの口からこぼれる。
「正しいと思うほう……」
もうだれもいない部屋へとアリアは向かった。