第3章 正しいと思う方を
「わたしはきっと、親友を見殺しにした自分を許せません。あのときを後悔し続けて、また次の壁外調査に出たときにその後悔を思い出して、仲間を殺し、自分を殺すのです」
目に涙が溜まる。
今にも崩れそうな感情を必死に抑え、アリアは唇を噛んだ。
「エルヴィン分隊長、わたしはこれから……どうすればいいのでしょう。親友を殺した罪を、後悔を引きずったままどう、生きていけばいいのでしょうか」
息を吸い、アリアは声を吐き出した。
「わたしは生きていていいのでしょうか」
答えの出ない問いだけがずっと頭の中を回っていた。
これから自分が調査兵団として巨人と戦っていけるのか、その不安だけがアリアの心を蝕んでいた。
アリアは顔を上げ、エルヴィンを見つめた。
黙ってアリアの言葉を聞いていたエルヴィンはやがて口を開いた。
「君が死ななければならないのなら私も死ななくてはならない」
小さな声だった。
「何度も選択を迫られ、その度に仲間を殺し、後悔をした。その築き上げた屍の上に私は立っている。……これから先、それは増えていくだろう」
後悔を繰り返したその先に希望があると信じて戦ってきた。築き上げた屍の上に夢があると信じて戦ってきた。それは今も変わらない。
「だが私は止まるわけにはいかない。死ぬわけにはいかない。調査兵団の兵士として、分隊長という仲間を率いる兵士として。だから私はいつも言い聞かせている。仲間を殺す度、後悔をする度、私は私に言い聞かせるんだ」
――これが最善策である、と。