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雨上がりの空をあなたと〈進撃の巨人〉

第3章 正しいと思う方を



 やまない雨はない。

 だれかが昔そう言った。
 どれだけ辛くても物ごとには終わりがある。だからそれまで耐えろ、という意味らしい。

 耐えればきっと雨はやむ。


「オリヴィア、来てくれて、ありがとう」


 もう見失わないように、オリヴィアと馬を並べて走りながらアリアは言った。

 フードの下から不思議そうなオリヴィアがこちらを見る。


「さっきまで1人で心細かったの。でもあなたが来てくれたおかげで……もう、大丈夫になった」


 アリアは雨に濡れた、手綱を握るオリヴィアの手に自分の手を重ねた。


「わたしたち2人なら大丈夫、だよね」


 半ば願うように。
 震える声で伝えれば、オリヴィアはニコッと笑った。


「大丈夫よ! あたしたちはこんなところで死んだりなんか――」


 そのときだ。

 アリアの全身を鈍い衝撃が走った。


「きゃあっ!!」


 オリヴィアの悲鳴が遠くから聞こえる。
 その声を聞きながら、アリアは宙を舞っていた。

 ドサッ、と地面を転がり体中を襲う痛みに呻く。


「な、にが……」


 なにかに強く押され、馬からはじき出されたのだ。
 隣にいたオリヴィアもその衝撃に巻き込まれたのだろう。

 咳き込みながらフードを跳ね除け、目の前に広がる光景を見た瞬間、アリアは息を止めた。

 轟いていた雷鳴も、雨音も、馬の嘶きも、自分の呼吸音ですらすべてが遠のき、消えていく。
 無音の世界の中、アリアは呆然と目を見張ることしかできなかった。


「いやぁああああ!!!」

「たすけてくれぇええええ!!!」

「死にたくない死にたくない! おかあさん!! おがあ゛ざん!!!」


 まず人の叫び声が聞こえた。

 次に雨音と雷鳴が戻った。

 そして最後に――


 バキッ、
 グチャッ、

 
 巨人が人を咀嚼する音がアリアの鼓膜を貫いた。



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