第3章 正しいと思う方を
ここまで順調だ。
イザベルと別れ、しばらく経ったころ、補給地点に到着した。
グリュックを休ませ、ガスと刃の補給をする。
巨人を倒せた事実はアリアにわずかな勇気を与えていた。壁外調査が始まってからアリアを蝕んでいた緊張や恐怖はもう少ない。
もちろん完全になくなったわけではないが。
「アリア!」
名前を呼ばれ、アリアは不備がないかを確認していた立体機動装置から顔を上げた。
声の主を探してきょろきょろしていると、鮮やかな赤毛が目に飛び込んできた。
「オリヴィア」
ほっ、とアリアは声を出す。
見知った顔を見るとやはり安心できた。
駆け寄ってきたオリヴィアは興奮気味に拳を握りしめていた。
「あたし、さっきハンジ班長に手伝ってもらいながらだけど巨人を1体討伐したのよ! あたしがうなじを削いだの!」
「わたしも巨人を殺したよ! 初陣でこれってすごいね!」
「スピード出世ってやつね!」
オリヴィアも訓練が役に立つことを肌で感じ、自信が湧いてきたのだろう。
顔色が明るい。
「予定ではあと3日あるから気を引き締めていこうね」
今にも泣き出しそうな曇り空が心配だが、途中撤退を余儀なくされるような大雨にはならないはずだ。
根拠のない考えだがそのときアリアはそう思っていた。
オリヴィアの手を握り、きゅっと表情を真剣にさせるアリアに彼女も笑顔を引っ込めた。
「そうね。頑張りましょう」
じゃあまた。と手を振り合い、アリアとオリヴィアはそれぞれの班の場所に戻った。
もうすぐ出発するという知らせがあったからだ。
補給地点を発って1時間。
雨が降り出した。