第17章 殺したくてたまらないという顔
「面会拒絶!?」
トロスト区防衛戦から二日後のことだった。
ハンジから告げられた言葉にアリアは素っ頓狂な声を上げた。
昼時の食堂はそれなりに騒がしかったが、アリアの声はそんな中でもよく響いた。
周りからの視線に一瞬身をすくめながらも、アリアは顔をしかめる。
「なんで……ほんの数秒でもいいんです。喋らなくても顔を見るだけでも」
蒸した芋をむしゃむしゃと食べるハンジはアリアの言葉になんとも言えない表情を浮かべた。
エレンが地下牢に閉じ込められてから二日。
意識を取り戻したという報告を憲兵団から受け、さぁ面会に行こうと意気込んでいたアリアは両手を組んで懇願した。
「そうは言っても、彼は現状この壁の中で最も危険な存在なんだ。巨人になれる人間なんて前例がない。保守派は今すぐにでもエレンの排除を望んでいるし、憲兵団もどちらかといえばそっちの派閥だ」
「じゃあどうすれば、」
「エルヴィンやリヴァイ、私たち幹部なら面会もできるだろう。君には申し訳ないけど、その報告を待ってもらうしかないね」
「そんなぁ……」
がっくりと肩を落とす。
特別作戦班という他の班とは立ち位置の異なる班に所属しているもののアリアは一般的に見ればただの平兵士に過ぎない。
特別作戦班の副官という立場だって同じ班のメンバーが一人また一人と減り、自分しかいなくなったから任されているだけ。なんの権限も持っていない。
アリアは大きなため息をついてテーブルに突っ伏した。
「エレンは……どうなるんですか?」
アリアの脳裏に笑顔を浮かべるエレンの姿が蘇る。
やんちゃで、正義感があって、アリアのことを本当の姉のように慕ってくれているかわいいあの子。
エレンはまだ15歳だ。まだ、ほんの子どもだ。それなのに信頼できる人間たちから引き剥がされ、たった一人で地下牢に閉じ込められている。きっと良い扱いは受けていないだろう。もしかしたら化け物と罵倒されているかもしれない。
そんなの、耐えられない。
想像するだけでアリアは吐き気を感じた。